
受け止めるということ 下巻
-介護編-
退院したその日から、介護は始まった。
慣れない在宅介護、繰り返されるトラブル、家族それぞれの思い、そして制度や支援との関わり。
できることと、できないことに向き合いながら、母を支えた日々を綴った記録。
有定虹人
この本について
百五十一日間の入院を終え、母が自宅へ戻った日。
一つの大きな山を越えたように思えたその日は、同時に在宅介護が始まる一日目でもありました。
訪問介護、訪問看護、デイサービス。初めて利用する介護サービスの中で、ストーマや尿バッグの管理、転倒、通院、家族の役割分担など、想像していなかった問題が次々と起こります。
支援する側にも事情があり、家族にもそれぞれできることと、できないことがある。そして制度にも、できることと限界がある。
何が正しいのか分からないまま、その時々で考え、相談し、選択しながら介護の日々は続いていきました。
『受け止めるということ 下巻』は、退院後の在宅介護から、その後の入院やリハビリ、そして少しずつ自分の生活を取り戻していく母の姿までを、家族の立場から綴った記録です。
介護の答えを示す本ではありません。
一人の家族が、目の前の現実とどう向き合っていったのか。その過程をありのままに残した一冊です。
本書で描かれていること
在宅介護の始まり
退院すれば、以前の暮らしに戻れるわけではありませんでした。訪問介護や訪問看護、デイサービスを利用しながら、寝たきりの母を自宅で支える新しい生活が始まります。
介護サービスと制度
ケアマネジャー、訪問看護、訪問介護、デイサービス、地域包括支援センター、市役所。それぞれの役割や制度を初めて知りながら、必要な支援を探していきます。
家族それぞれの限界
できることは、人によって違います。同居する家族、別居する家族、そして母本人。それぞれの考えや負担の違いに戸惑いながら、誰が何を担うのかを模索していきます。
支えることと、背負うこと
介護を続ける中で、知らず知らずのうちに「自分が何とかしなければ」と考えるようになっていました。しかし、介護は一人で背負い続けられるものではないことにも気づいていきます。
回復、そして続いていく暮らし
寝たきりだった母は、長い時間をかけて少しずつ回復していきます。やがて自分でトイレへ行き、ストーマの処理をし、そして再び歩けるようになります。それでも、介護そのものが終わったわけではありません。暮らしは形を変えながら続いていきます。
著者について
有定虹人
日々の暮らしの中で経験したこと、そのとき感じたことや考えたことをもとに、現実と心のあいだにあるものを言葉にしています。
大きな出来事だけではなく、何気ない会話や迷い、答えの出なかったことも含めて、一人の人間がそのとき何を感じ、どう向き合ったのかを残していきたいと考えています。
現実と心のあわいを綴る。
それが、有定虹人として書くときに大切にしていることです。
この本を書いた理由
母の入院をきっかけに始めた記録は、退院後も続いていきました。
むしろ、病院を離れてからの方が、分からないことは増えていったのかもしれません。
介護サービスのこと、制度のこと、家族の役割、費用のこと。そして、毎日の暮らしの中で突然起こる小さな異変。
調べても答えが見つからないことや、専門家に尋ねても一つの答えにはならないこともありました。
そのたびに考え、相談し、その時にできる選択をしてきました。
この記録を書き続ける中で、自分と同じように、初めて介護を前にして「何をすればいいのだろう」と戸惑っている人は少なくないのではないかと思うようになりました。
患者本人、家族、医療や介護に携わる人たち。それぞれに立場があり、見えているものも違います。
そして振り返ってみれば、私自身も母を支えようとするあまり、家族にも、自分にも、多くを求めすぎていたのだと思います。
できる人が、できることをする。
できないことは、人に頼る。制度に頼る。
必要なら、少し離れて休む。
それもまた、介護なのだと少しずつ分かるようになりました。
この本に、介護の答えが書かれているわけではありません。
それでも、一人の家族が何に戸惑い、何を考え、どう向き合ったのか。
その経験を一つの形として残すことで、誰かが何かを感じたり、考えたりするきっかけになればと思い、この本を書きました。
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『受け止めるということ 下巻』
在宅介護の始まりから、家族・医療・介護・制度との関わり、そして母が少しずつ自分の暮らしを取り戻していくまでを綴った記録です。
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